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本部・東日本委員会

2013.11.07

東京スカイツリー

 117日に開催された第4回事例研究会において、佐川急便様の手がける
東京スカイツリータウンでの館内物流管理について紹介・見学いただく機会を戴いた。
開催当日に紹介いただいたソリューション、ならびに、「新たなる館内物流」の実現に
向けた取組みの経緯・課題、そしてその成果と今後の展開について紹介いたします。

■背景:大規模商業施設の物流における課題

まず背景として20006月、いわゆる「まちづくり三法」の一環として「大規模 小売店舗 立地法」が施行
されたことが挙げられる。この法律は、大規模な商業施設には必ずついてまわる問題、例えば納品待ち
トラックによる慢性的な渋滞、伴い周辺道路での事故危険性の増大や違法駐車など、地域社会に及ぼす
悪影響について施設事業者が主体的に抑制解決する事を強く求める内容となっており、納品車両の抑制・
コントロールが重要課題となった。

加えて、近年ではテロなどに対するセキュリティー対策も喫緊の課題となり、さらに一方では、館内のみな
らず周辺地域に対しても貢献できる付加価値を提供することで施設自体の存在価値を上げていく、
というように、地域における施設のありかたも、新たな課題となってきました。

都市型複合施設の物流における問題点

都市型複合施設の物流においては、共通した4つの
問題点がある。

    直納構成比が高い事による、搬入車両台数の増大」
大型商業施設において納品される商品は、宅配便や郵便だけでなく、大型什器や工事機材、あるいは
生鮮食材など非常に多種多様であり、それらは大半が直納車両によって持ち込まれている。
佐川急便様調査データによると、全納品車両のうち、宅配便車両は全体の僅か
4%に過ぎず、残りは
サプライヤーが直に納める直納車両やテナント向けの専用車両、あるいは工事車両が大半を占めている、
というのが実態であった。
したがって、ただ単に「宅配便を集約するだけ」での取り組みでは、荷捌きの効率的な運用は出来ない。

②「物流導線の問題」
館内における物流導線は、道路のような平面の導線だけではなく、貨物用エレベーターによって垂直方向にも
展開する、いわば「空間導線」によって構成されている。ところが、この貨物用エレベーターが渋滞しボトルネック
となっているケースが散見される。また一方で、工事やイベントなど、入館車両の波動により荷捌き場駐車場が
混雑してしまった場合、効率悪化の大きな要因となる。

これらを解消するには、施設内部で発生する作業や工事などの「内側に関する情報」、そして、
納品など「外から
入ってくるものに関する情報」つまり「モノ・ヒト・クルマの情報」が一元的に管理され、
且つ包括的にコントロールすることが必要になる。

③「セキュリティーの問題」:
直納車両などが直接テナントなどに納品する場合、外部からの納品スタッフの入退館管理は、通常は帳簿
への自主記入のみ、であるなど極めて限定的である。したがって、セキュリティー低下はもとより、伴い台車
事故などによる施設共用部の破損や汚損についても惹起者の特定ができず、結果、それらを直すための
費用が嵩むなど、施設維持コストへの悪影響要因ともなっている。

④「管理運営コスト捻出の問題」:
前述のとおり、効率的荷捌きには貨物用エレベーターの運用配分、内的情報と外的情報の一元管理など
「空間導線」の考え方での管理コントロールが欠かせない。
ところが、これらに必要な管理運営のコストについては、施設オーナーや管理会社に対して合理的根拠を
添えて提示し「管理運営費」として収受するにあたり理解を得ることは実際には極めて難しい、というのが実態
である。もし単なる「館内配送」として受託した場合においては配送業務と他社代行手数料のみ、の収益
となり集配業務のみでも採算確保は厳しいことから、効率的な運営に必要な管理・コントロールは為されない。
結果、荷捌き効率は上がらず、施設の周辺では納品車両による渋滞や違法駐車の問題が一段と悪化している、
といった状況に陥るのである。
このように、いわゆる「館内配送」の観点に終始したモデルでは、そもそも本来必要とされるべき「周辺環境に
配慮した物流管理モデル」には繋がらず施設事業者メリットを創出できない。これではビジネスとして成り立って
いるとはいえない。

■東京スカイツリーでの取組み
前述の課題・問題点を踏まえた上での、東京スカイツリーでの取組みを以下に紹介します。

    施設計画段階からの参画:
前述の課題・諸問題の解決に際し、物流事業者として計画段階から参画する必要性を当初より認識していた
佐川急便様では、施設事業者である東武鉄道様のご理解のもと「物流管理センター開業準備室」を設置し
グランドオープンの約
3年前からスキーム構築を開始。納品に係わる車両数・商品数・施設内部の作業・工事
に係わる機材搬入・など、商品搬入に限定しないあらゆる物流とその導線そして時間軸の四次元的観点で
シミュレーションを繰り返し行うことで、効率的な運用構築を目標とした。

    荷捌き場の効率的運用スキーム:
運用スキームとしては、大別すると①従来の「直納方式」に、②納品事業者や運送事業者が荷物を運び物流
管理センターで下ろす「ドライブスルー方式」と③スカイツリー外部にある3ヵ所の物流センターで商品を集約し、
当社が指定した専用車両に積み替えて持ち込む「外部センター集約方式」の3通りがあります。
ドライブスルー方式や外部センター集約方式で届いた商品は、物流管理センターのスタッフにより2ヶ所の
荷捌き場で受付を行い、その他直納車両の入館スケジュールを含め、出入りする全ての人と車両そしてモノを
4か所の荷捌き場で管理したことで、各テナントへの受け渡しを集約し回数を大幅削減。結果、その納品品質
には高い評価を得ている。

③セキュリティー機能の強化:
多くの複合施設では、今まで共同配送を中心に納品することだけを目的にしていた為、入館者や搬出入車両
の管理に目が行き届かなかった。しかし、東京スカイツリーでは納品に伴う事前登録制を採用したことで、
車両や商品内容・数量など情報の事前把握が可能となった。また警備会社との連携で、物流管理センターが
納品時の入退館管理とセキュリティーカードの貸し出しを行うことで、納品時の不審物など二重のセキュリティー
を確保、高いセキュリティレベルを実現しながらも、本来は相反する物流効率も低下させること無く両立させて
いる。

    運営管理費を原資とした包括的物流管理とコントロール:
これら効率的な館内物流を運営するに原資となる管理コストの捻出については、施設事業者・入居者・
納品事業者など物流の全関係者側も、佐川急便様が提言するソリューションでのメリット、および受益者負担
の考え方を理解し、合意することとなり、結果、包括的な物流管理とコントロールによりメリットを創出し、
効率的で円滑な物流運用だけでなく、エレベーター使用頻度の効率化や施設修繕費の抑制などにも繋がり、
効率化と全体コスト抑制の両立を実現することが出来た。
このように、佐川急便様は施設事業者との間で「課題と価値観」を共有しながら、単なる館内配送に留まらない
「モノ・車・ヒトそして情報」の一元管理とコントロールを進められて、現在では違法駐車による荷捌き待ちの
トラックは姿を消し、地域住民の安全確保が図られ、良好な生活環境の継続と維持が図られている。

■館内物流における新たな価値の創出に向けて
新たな取り組みとして、テナントや地域住民に向けた各種サポートサービスの提供も検討・試行中である。
例えば業務支援として、オフィス引越しやレイアウト変更に伴う作業、オフィスサプライ品の配達などのビジネス
サポート、あるいは生活支援として、日用品や食品などを即日配達する地域デリバリーなどがそれだ。
さらには今後急速に増加することが見込まれる海外からなどの観光客に対し手ぶら観光実現するサービスも、
この東京スカイツリーを含めたネットワークでリリースする計画である。館内物流スキームでの機能を基点に、
より幅広い利用者に対し更なる利便性やサービスを提供し「施設自体の価値向上」に寄与していくということ
である。
TOKYOオリンピックの開催も決定された今、大都市の再開発では大型複合施設がますます増加していく。
これからは、物流事業者と、施設側が企画設計の段階から参画し、物流視点での機能と環境を十分に
考慮した、新たな館内物流の仕組みを構築することが極めて重要であることが理解できた。     以上

システムのレクチャー風景 スカイツリーをバックに記念撮影



コメント

私も参加したかったです。
  • 2014.01.27 21:00
  • 島袋

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